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2001年、9・11テロが起こった年にクリスとタヤは結婚し、クリスの1回目の派遣が決まる。クリスは、つぎつぎとと兵士を射殺し、最強の狙撃手と呼ばれるようになる。, ※今回はコメント欄で「ロロ・トマシ」さん、「シオンソルト」さん、「毒親育ちさん」が素晴らしい意見を出しているので、そちらもぜひお読みください!, クリント・イーストウッド監督最新作にして、実在の狙撃手・クリス・カイルの自伝『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』を原作とした映画です。, 本国では戦争映画史上最高の興行収入額を記録するほどの大ヒット、日本でも抜きんでた初動記録を打ち立てた本作ですが、その評価は賛否両論であり、数多くの論争が巻き起こっています。 その心情も確かにあったのでしょう。, しかし、カイルは中盤で若い帰還兵に「私が生きているのはあなたのおかげです」と教えられたとき、きょとんとしていて、自分が彼を救ったという自覚はなさそうでした。 昨今は、例えば日本のアニメがあちらで放映される場合、アラビア語圏のどこでも放映できるようにフスハーで吹き替えされることが多いため、子ども達や若い世代には割と馴染んでいる向きもあるようですが(子どもにインタビューマイクを向けるとフスハーに近い言葉で話してくることが多いです)、ある程度の年齢以上では話し言葉にフスハーを使うことに違和感を覚えることが普通です。(アラビア語講座などでも大抵の講師はその違和感を抱えたままフスハーを教えています) USAショックス | 2015.03.20 Fri | 57 shares ※決して「アルカイダ」始めイスラム原理主義過激派の蛮行に賛同する訳ではありませんが。 カイルは確かに国のため、仲間を救うために、敵を殺し続けたー 恐らく(映画では無く)実際の米軍通訳もフスハーを使っているのだろうと思われます。 >クリント・イーストウッド 私達の身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション(心理学)、メンタルヘルス(精神医学)、婚活(恋愛心理学)を見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。, ********・心的外傷後ストレス障害(PTSD)・過覚醒・陰性症状・侵入症状・進化精神医学・心的外傷後成長(PTG)********, みなさんは、トラウマがありますか? トラウマとはどんなものでしょうか? そもそもなぜトラウマは「ある」のでしょうか? そして、トラウマにどうすれば良いのでしょうか?, これらの疑問を解き明かすために、今回は、2015年の映画「アメリカン・スナイパー」を取り上げます。この映画を通して、トラウマを進化精神医学的に掘り下げ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の理解を深め、私たちの身近な「トラウマ」への対策をいっしょに考えていきましょう。, 2000年代のイラク戦争で、スナイパーとして活躍した実在の人物、クリス・カイルの一生が描かれています。彼は、米軍史上最多160人を射殺した伝説のスナイパーとして英雄視されていました。一方で、PTSDの症状で苦しみながらも、良き夫、良き父でありたいと願う一人の男なのでした。, クリスは、軽い冗談を言って、よくふざけます。また、後に妻となるタヤと初めて出会った時は、「おれは国のために命を捧げる」と真面目に言い切ります。彼は、もともと、カウボーイにはまる素朴で陽気なテキサス人でした。, そんなクリスは、特殊部隊のスナイパーとして、4回に渡り戦地に派遣され、合計1000日ほど戦地で過ごします。彼は、帰ってくるたびに、少しずつ人が変わっていきます。このトラウマの症状(PTSD)を主に3つに分けて整理してみましょう。, ①過覚醒―「心のアレルギー反応」 いったいなぜ、と問われそうなところですが、帰還兵もまたPTSDを患っていたためであり、その正確な理由は不明。現在も裁判中とのことです。 アラビア語の字幕は必要なところ以外は無くて良かったと思います。わからない方が恐怖を抱くからです。 「へー、こんな代名詞になっているのか」と感心してしまいました。 何日も引きずってしまうような重さを感じることはないでしょう。, また、本作で主人公は周りから「アメリカの英雄」として賞賛されているように見えますが、本当にそれだけでしょうか。 カウボーイ気取りの青年クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)は、ネイビー・シールズに応募する。 約5億年前に誕生した魚類は、天敵などの危険に警戒する扁桃体を進化させました。重度ストレスとなる大きな危険を体験した後は、同じように危険な目に遭っても逃げられるように、易刺激性や警戒心など常に交感神経が亢進した過覚醒が出現するようにようになったと考えられます。, つまり、トラウマの症状である過覚醒は、その危険に備えるために必要なメカニズムだから、「ある」と言えるでしょう。, ②危険を避ける 主人公は「最強」と呼ばれる狙撃手で、「国を守るために戦う」とも宣言しており、一見してアメリカ万歳な屈強な男に見えます。 戦争では人殺し、家庭では気のいいパパ。 カイルは、自身が望む番犬に成りきれなかったところもあるのでしょう。, 映画の最後に、カイルは「帰還兵に銃殺された」とテロップで知らされることになります。 シオンソルトさんのお話、たいへん興味深く読ませていただきました。 それは「自分には帰る資格があるのか」という訴えによるものであると思えました。, カイルは狙撃に成功はしましたが、増援を待たずにムスタファを射殺してしまったために、大勢の敵の侵入を許してしまっていました。 (映画では描かれていませんでしたが、カイルはPTSDに悩む帰還兵のためのNPO団体を設立していました), 戦争によるPTSDに悩み、PTSDを抱えた帰還兵のことを考えていた彼が、戦争で心を蝕まれた者に命を奪われるというのは、あまりに皮肉的です。 観客に求められているのは、単純な戦争の是非そのものよりも、残酷な運命に翻弄される人間のはかなさや、人間の複雑な感情を読み取ることだと思うのです。, 個人的に、本作は戦争映画が苦手な人にもおすすめできる作品であると思いました。 約700万年前に誕生した人類は、その後に森から草原に出て、協力するために集団に合わせる脳を進化させました(社会脳)。重度ストレスとなる大きな危険を体験した後は、同じような危険な目に遭っても、感情麻痺やサバイバーズギルトなどのように、取り乱さずに集団のために役に立とうと順応する陰性症状が出現するようになったと考えられます。ただし、PTSDから二次的に併発したうつ病の症状は、陰性症状とは別に分けて考えます。, つまり、トラウマの症状である陰性症状は、その危険に染まるために必要なメカニズムだから、「ある」と言えるでしょう。, それでは、トラウマにどうすれば良いでしょうか? クリスほどのトラウマではないにしても、私たちも同じように忘れたくても忘れられない「トラウマ」があるでしょう。例えば、いじめ、裏切り、仕事の失敗、そして失恋などです。, クリスが除隊後にしてきたことを通して、私たちの「トラウマ」にもできる対策を大きく3つに分けてみましょう。, ①トラウマを色あせさせる が胸に刻まれます。訳や演出一つとってもこれだけ考えさせられるとは、イーストウッド監督は凄い映画を撮ってくれたものです。 その理由のひとつが、戦争から戻ってきたときの「日常」を大切に描いていることです。 ・予告編 クリスは、除隊後、イラク派遣での経験を生かし、民間軍事会社を設立し、講演活動や、執筆活動を行っています。160人も殺したことに後悔を持たないよう、その経験を次のキャリアに役立ています。, このように、3つ目はトラウマを塗り替えることです。これは、トラウマに新たなプラスの意味付けをする認知行動療法や眼球運動脱感作再処理法(EMDR)にもつながります。, 私たちも同じように、つらいことがあった時は、それを単なる黒歴史のままにしておくのではなく、笑い話のネタにする、つまりユーモアのセンスが治療的であると言えるでしょう。, クリスは、やがてトラウマを乗り越えます。再び、冗談ばかりを言う家族思いのかつてのクリスに戻ります。そして、帰還兵を支援し、会社を興すなどの社会貢献をして、人生をより前向きに生きるようになります。もはやただのカウボーイ好きではなくなりました。, このように、トラウマは、心の傷というマイナス面だけでなく、傷が癒えた後に成長するというプラス面もあることが分かります。これは、心的外傷後成長(PTG)と呼ばれています。私たちは、PTSDからPTGへというトラウマの両面性をより良く理解することで、この映画から、より多くのことをよりリアルに学ぶことができるのではないでしょうか?, 1)アメリカン・スナイパー:クリス・カイルほか、ハヤカワ文庫、2015 カイルたちは食事に招かれますが、ひとりの男の「ひじのアザ(=狙撃のためにひじを地面につけている)」に気づき、武器を隠し持っていることを暴きます。, オリンピック先取でもある狙撃手・ムスタファにカイルたちは狙われ、仲間に犠牲者を出しました。 2)こころの科学「トラウマ」:加藤寛編、2012年9月号 こうした時間軸の描きかたをするとき、「内容は同じだが、視点や見せかたが異なる」のはよくある構成ですが、なぜか本作ではまるっきり同じシーンを流しています(台詞やアングルも同じ)。単なるコピペです。 今回のようにイラク戦争を考えたり、実在した人物に想いを馳せたり、アラビア語に関する知識が増えたりしたことはとても嬉しいことです。 それは前述のような戦争賛美ではなく、「戦争はだめだ!」という戦争批判でもありません(本作には戦争批判もあるのですが)。 私達にとって戦地は「非日常」です。兵士にとっても戦地は最初は「非日常」です。しかし、回数が増えていくことによって「日常」になっていきます。彼らが母国へ帰って家族と過ごす時間は果たして「日常」なのでしょうか。作中では徐々に戦場が「日常」、家族との生活が「非日常」に変わっていく気がしました。 「ドリル」の音には過剰に反応し、 自分の娘が泣いているのにかまってもらえないときには憤り、 ... 『アメリカン・スナイパー』の主人公クリスには、そうした思考や躊躇といったものが感じられない。無論、それらはスナイパーにとっては余計なものだという考え方もあるでしょうから必ず 「ドリル」の音には過剰に反応し、 (映画のはじめに、女性と子どもを射殺して「的確な判断だ」と賞賛されたことと対になっている事実です)。, また、これまであれほど多くの人間を殺してきたカイルでしたが、敵にも家族がいたことを想像したのではないでしょうか。 『アメリカン・スナイパー』 それは違うよ、モハメッド :映画のブログ で、演説で使われるということでお気付きの人もいるかもしれませんが、いわゆる武装集団が犯行声明等に使っている言葉もフスハーです。しかもアルジャジーラ等よりもより厳格な文法/発音のフスハーであることが多いです。 鴨志田自身、生前はいわゆる戦況的な撮影はほとんど行わず、専ら一般市民を捉えた写真ばかりを撮っており、それ故に戦場カメラマンとしてはほとんど評価されませんでした。 3)PTGの可能性と課題:宅香菜子編、金子書房、2016, なんで時間を考えるのが癒しになるの?【アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)】. 『父親たちの星条旗』でもそうでしたが、「英雄」と呼ばれる者を、そのまま「英雄」として描いていません。 あと、中東の人達のご不満は仕方ないので、 シオンソルトさん、ありがとうございます。, ロロ・トマシさんとシオン・ソルトさんの考察とご意見、改めてヒナタカさんの 5つ星のうち4.2 6,250個の評価. 『アメリカン・スナイパー』を殺害した男の壮絶な半生に迫る. 厳しい訓練が続く中、クリスはバーで美女のタヤ(シエナ・ミラー)と出会う。 やはり相手の言葉がわからない状況の方が混乱を生み出し、戦争という恐怖を追体験できるのではないでしょうか。 ・「日常」と「非日常」 (「キャプテン・アメリカ」は原作でも、第二次大戦時の記憶や、今現在ヒーローとして活動含めてけっこう苦悩している所が描かれているのですけど) アラビア語圏の方の話す内容が100%汲み取られ、通訳されている可能性は低いかもしれないのですね。そのようなズレが余計に状況を混乱させるのかもしれません。 対する現地人は「アンミーヤ」と呼ばれる話し言葉を使っています。イラク方言は比較的フスハーに近い単語や文法ではありますが、それでも、より砕けた表現になります。 余談ですがこのシーン、ちょっと前に観た「ジャッジ~裁かれる判事~」のラストを思い出しました。ネタバレになるので詳しく書けませんが・・・。 映画『アイアンマン』で主人公のトニーがアフガニスタンのゲリラに拉致されるシーンがあります。字幕版ではゲリラ達の会話に字幕が付かず、彼らの言葉がわからなくて恐怖するトニーに感情移入してしまいました。しかし、吹き替え版ではゲリラ達は日本語で会話し「観客はゲリラの会話が理解でき、トニーは置いてけぼり」というズレた演出になっていました。 弱者である羊を狩る狼。 加えて、『アメリカン・スナイパー』の台詞はかなり下品なんですね。これが更にあちらの人間を逆撫でしているであろうとは思いました。 この映画は「戦争もの」です。戦争をそのまま描いています。それによって観る側が「彼は英雄だ!」とも「戦争を美化している!」とも自由に感じて良いのです。この映画を機に戦争そのものを皆で考え、賛否両論で論争が起きているのは良いことではないでしょうか。 つまり、トラウマの症状である侵入症状は、その危険を避けるために必要なメカニズムだから、「ある」と言えるでしょう。, ③危険に染まる これは、カイルが観ていた「何も映っていないテレビ」を暗示しているようにも思えますし、カイルという英雄にささげる黙祷(moment silence)にも思えます。, 戦争に心を蝕まれる悲劇を体験した人にとっては、ここで銃声が聞こえるのかも… クリント・イーストウッド監督なので安心して観れました。文句なしの出来です。戦争という狂気の世界を見事に描いています。ブラッドリー・クーパーも素晴らしい役者ですね。2人とも大好きだー。 昨今、ISISに合流する多国籍の若者が多いというニュースをしばしば耳にしますが、その背景にはそうした部分もあるのではないか、などと思っています。, どうも、25歳の映画ファンです。 で、これは飽く迄も個人的な印象なのですが、その不評の物言いが『ハート・ロッカー』の時よりも酷いように感じています。(罵詈雑言が酷い…) クリスは、帰国して家のリビングルームにいても、頭の中では銃声や爆撃の音、子どもの泣き声や叫び声が聞こえ、戦地での場面場面が見えています(フラッシュバック)。もちろん目の前のテレビはついていません。血圧を測定すると170/110で、治療が必要な高血圧になっています。妻から「心も戻ってきて」「もう行かないで」と何度も懇願されても、取り憑かれたように「国を守る」と言い、また戦地に向かいます。, 原作では、自国で銃撃戦のシミュレーションゲームを行っている時は心拍数と血圧が安定していて、ゲームが終了するとどちらも不安定になったと述べています(自律神経症状)。4度目の派遣を終えて帰国した時は、落ち着かず’、すぐに家に帰れない精神状態になっていました(不安焦燥)。, 2つ目は、このような極限状況の体験が侵入してくる侵入症状です。まさに、戦地の状況に取り憑かれ、染まってしまう「心の囚われ」が起こっています。, ③陰性症状―「心の麻痺」 それは心からの願い……だったはずなのですが、その後にカイルはすぐに帰らずに、バーからタヤに再度電話をしています。「時間がいる」と……, なぜカイルがすぐに帰れなかったのかー 作中で「姿を現さない相手・敵」のことを「カイザー・ソゼ」と言っていました。これは映画『ユージュアル・サスペクツ』に出てくる謎の人物「カイザー・ソゼ」から来ている表現です。, カイルたちは傭兵を率いる大物ザルカウィを狙います。 クリスは、除隊後、体や心に傷を負った帰還兵の戦地での体験談を聞きます。また、射撃訓練を通して、帰還兵のサポートという役回りを買って出ます。帰還兵たちとのつながりを大切にしています。, このように、2つ目はトラウマを共有することです。これは、お互いに分かり合えて助け合える自助グループなどの集団療法にもつながります。支えることは支えられることでもあります。, 私たちも同じように、つらいことがあった時は、それを心の奥底に押し込めるのではなく、分かってもらえる人に話す、つまり心の風通しが治療的であると言えるでしょう。, ③トラウマを塗り替える 気のいい青年ビグルスは「彼女にダイヤを贈る」と言った後に、狙撃されて半身不随かつ盲目になったうえ、恋人とその後の人生を過ごすこともなく死にました。, 映画の初め、カイルは若い女性と子どもを狙撃して殺し、「初めてがこんなことになるとは」と告白していました。 参考↓ 戦争のために、これほどに人は苦悩する……そのようなメッセージを感じるのです。, さらに言えば、イーストウッド監督は『ミリオンダラー・ベイビー』や『ミスティック・リバー』や『チェンジリング』で、残酷な運命に翻弄される人間の姿を描いています。 自分の娘が泣いているのにかまってもらえないときには憤り、 この御方にはぜひ、松本零士先生の「ザ・コックピット」シリーズの実写化とか手がけて欲しいです。 同じアラビア語でも、公共的に用いられる「フスハー」と、日常的に用いられる「アンミーヤ」があるのですね。知りませんでした。 彼の亡くなり方は「イラク戦争そのもの」を表現したような感じですね…。どのように亡くなられたのかは、作品を観るまで知らなかったので衝撃でした。 ・カイルの死 悔やむのはマークやビグルスを救えなかったことだー そこはアルカイダの女性の視点から描くなどをしてもよかったのでは?と少し疑問に思いました。, ※以下の意見をいただきました。 この前に、カイルは息子に「ゲームをやろうよ!」とお願いされて「パパはまだレベル4なんだぞ!」と答えたり、娘の「クマのまね」に応えたり、あたりまえの日常を過ごしていました。 私がこれを高く評価している理由のひとつとして、カモシダ(鴨志田穣)のどうしようもないダメ親父っぷりを辛辣に批判的に描き、しかしその彼の心理的な事情として戦場で受けたトラウマを鋭く描き、かといってそれを以て弁護しようというものでも無い、という点があります。 不謹慎ながら最初にポスターを観た時には「あれ?もうキャプテンアメリカの三作目公開するの!?」とカンチガイしてしまいましたが、クリスさんがシールズを志願した動機がキャップと被るように見えて、キャップを崇拝対象とまで思っている私には、勝手ながら悲しくなりました・・・。 これは仲間を大切にしていたカイルにとって、最善の作戦ではなかったはずです。 『ハート・ロッカー』には爆弾工場で“地雷”となった少年の死体が発見されるシーンがあります。くだんの作品の主人公ジェームズは、一度は工場の一斉爆破による除去を考えますが、考え直し、危険を顧みずに死体を開いて爆弾を取り出し、死体を弔おうとします。 カイルがすぐに家に帰れなかったのも「日常」と「非日常」の切り替えができなくなっているからではないのかと感じました。(すぐに家に帰れない現象はベトナム戦争を扱った映画『ディア・ハンター』でも描かれています) 軍隊は人殺しや強姦を楽しみたい人がなる職業です!なんて真顔で小学生の前で言う先生が存在するなんて、都市伝説としか思えない学生生活を送ってきました。仰げば尊し我が師の恩・・・。 「神はいるか」「信じる心を無くした」と訴えていた仲間のマークは、あっさりと奇襲により殺されます。 とても『ハングオーバー!』のチャラ男と同一人物だとは思えません。, 銃殺シーンが直接的に描かれているため、R15+指定になったのも当然ではありますが、ぜひ若い人にも観てほしい作品です。 そんな彼が日常では、欠点も含めた等身大の「父親」として描かれるのです。 今週末見るべき映画「アメリカン・スナイパー」 (1/4)|アート|Excite ism(エキサイトイズム) 『アメリカン・スナイパー』の主人公クリスには、そうした思考や躊躇といったものが感じられない。無論、それらはスナイパーにとっては余計なものだという考え方もあるでしょうから必ずしも批判はできない。 この辺りのギャップを想像していくと、アラビア地域の人が本作から受ける「差」のようなものを窺うことができるのではないかと思います。, 余談ながら、アラビア語学習者にとってフスハーは聴き取りやすいため、(現地の人からすれば違和感アリアリでしょうが)耳に心地良く感じられる人が多いと言われています。私もその一人です。 アラビア後のセリフに字幕が付かない所がありましたね。町に流れる放送内容や米軍への野次含め、全て邦訳して欲しかったです。 現地のアメリカの協力者が、反政府武装勢力に捕らえられ、見せしめにその子どもがドリルで傷付けられ殺されるというおぞましいシーンがあります。それを目の当たりにしたクリスは、その後に帰国してから、些細な機械音に落ち着かなくなります。車の修理場で、ドリルの音を聞いただけで、何度もびくっとします。特定の刺激に敏感になっています(易刺激性)。赤ちゃんが生まれた時、自分の赤ちゃんが泣いているのに放っておかれていると思い込み、看護師を怒鳴りつけます(易怒性)。和気あいあいとしたバーベキューパーティで、子どもにじゃれてきた犬を噛み付いてきたと勘違いして、殴り殺そうとします(警戒心)。, 1つ目は、このように平穏なはずの自国でも常に戦闘態勢になってしまう過覚醒です。まさに、戦地での音や窮地の状況などの記憶が「アレルギー物質」となり、似たような音や状況で「心のアレルギー反応」を引き起こしていると言えます。, ②侵入症状―「心の囚われ」 フスハーは端的に言えば「共通語」なのですが、実際には文語体のアラビア語で、演説やニュース等では使われるものの、口語としては一般的ではありません。 映画の中のクリスさんは隣に住んでいても安心出来そうに感じました。でも、現実は映画の観客の視点では隣人を観る事は出来ないのですよね。 ・無音のエンドロール 自分は最初アラビア語が訳されない個所が多いのに、一応同じ人類なのに相手側が「プレデター」や「仮面ライダークウガ」の「グロンギ族」のように独自に立派な文化や言語を持つ知的生命体だけれども、決して解り合えそうに無い怪物のように見えてしまうのではという不満を感じていました。しかし、ロロ・トマシさんの仰るように、あえてそうする事で戦争の恐怖を演出したり、シオン・ソルトさんの仰るように語学としてアラビア語の複雑な事情が有り、迂闊な訳が誤解を招いてしまう事への配慮だったりと納得しました。 何故に、どこがそこまで気に入らないものなのか。残念ながらその辺りに言及しているコメントが見付からないのですが、率直な自分の感想としても実は似た感じだったので、恐らく彼らも似たようなものなのかもしれないという勝手な解釈で述べさせて頂くと…。 仲間たちは彼のことを「伝説」と呼んでいますが、どこか蔑称のような呼びかたにも聞こえなかったでしょうか。 アメリカン・スナイパー [Blu-ray] ブラッドリー・クーパー (出演), シエナ・ミラー (出演), クリント・イーストウッ (監督) & 形式: Blu-ray. 町山智浩 クリント・イーストウッド監督 アメリカン・スナイパーを語る ・「反戦もの」と「戦争もの」 ふつうに考えれば、主人公は戦争で数多のも人を殺し、自ら進んで戦地に向かうという、「理解できない」男です。 映画のワンシーンを切り取った予告編がものすごく印象的でした。一瞬で戦場に連れて行かれたような感覚に陥りました。, ロロ・トマシさんがアラビア語のことに少し触れてらしたので。 誤解を怖れずに言うと、これはめっっっさ耳に心地良いのです。脳内麻薬、出まくりです。何せ、学んでいる言葉がそのまんま響いてくるのですから。 コミュニケーションラボ・シネマセラピーコラム2018年5月号 映画「アメリカン・スナイパー」なぜトラウマは「ある」の? どうすれば良いの?みなさんは、トラウマがありますか? トラウマとはどんなものでしょうか? そもそもなぜトラウマは「ある」のでしょうか? ・カイザー・ソゼ ・アラビア語の字幕について じつは本作の、現地人と、米軍側の通訳の使うアラビア語は、それぞれ別物になっています。 戦争とは関係なく、カイルをひとりの人間をして観た人は、ここで静かに黙祷をささげるのかもしれません。, おすすめ↓ <『アメリカン・スナイパー』射殺事件の真相は | アメリカ | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト>, カイルはその前に、医者に「ここ(病院)にも助けを求めている兵士がいる」と諭され、兵士が語る話を聞いていました。 作中で「姿を現さない相手・敵」のことを「カイザー・ソゼ」と言っていました。これは映画『ユージュアル・サスペクツ』に出てくる謎の人物「カイザー・ソゼ」から来ている表現です。 3人の米兵の戦争の後日談が綴られていくという作風となっており、普通の人間がボロボロになっていく姿がしっかりと描かれているのです。, 『父親~』と「対」になっている作品『硫黄島の手紙』では、同じ戦争を敵側の視点で、違った作風で描ききりました。, この作品では、地獄のような苦しみを経験した日本兵(米兵にとっては敵)の姿がこれでもかと描かれていました。, さらに、『グラン・トリノ』では、クリント・イーストウッド自身が、朝鮮戦争で大量に兵士を殺した経験を持つ老人役で出演しています。, これらの作品を顧みると、イーストウッド監督の訴えは一貫しているように思います。 カイルを英雄だと思っている人には、ここでカイルをたたえるトランペットの音色が聞こえ続けるのかも。 しかし、彼の心は戦場で次第に蝕まれ、その「変化」は日常に現れていくのです。, じつはいままでのイーストウッド作品でも、戦争により傷ついていく人間の姿が描かれています。, この作品では「戦争に英雄はいない」ということばを何度も耳にします。 >『父親~』と「対」になっている作品『硫黄島の手紙』 >~無音~ >~羊と狼と番犬~ ひとりの人間についてそんなアンビバレントな印象を持てるということは貴重です。, このおかげで、戦争映画にありがちな暗すぎて気が滅入るような作風にもなっていません。 くり返しになりますが、描いているのは記号的なものではなく、等身大の人間なのです。, 主人公を演じたブラッドリー・クーパーは、その心の変化をわずかな表情の違いで完璧に表現しきっていました。 /. のようにクリスさんのライバル的存在だったムスタファを主人公にした作品を撮っては如何でしょう。, 中東情勢に関心があり、アラビア語を若干かじっていることから、あちら側の反応を見ているのですが、相当に不評のようです。 約2億年前に誕生した哺乳類は、生まれてからより多くの記憶の学習をする脳を進化させました。重度ストレスとなる大きな危険を体験した後は、同じように危険な目に遭わないように、フラッシュバックや悪夢など繰り返しその時の状況を疑似体験できる侵入症状が出現するようになったと考えられます。 戦争に縁がない人にとっても、「人殺し」である主人公のことを好きになれるのではないでしょうか。, 人殺しを好きになるなんてとんでもないことなのかもしれませんが、これこそこの映画のおもしろいところです。 それはたとえば、「イラク戦争を賛美している」「160人も殺した男を英雄視している」「スナイパーは臆病ものだ(by マイケル・ムーア)」などなど……(マイケル・ムーアは幼少時からスナイパーが卑怯な人種であると教えこまれていたそうです), しかし、実際の映画はそういう左翼だとか右翼だとか、アメリカ万歳などといった傾倒した描きかたをしていないと思います。, その思った理由のひとつが、本作が戦争で傷ついていく、狂っていく人間の姿を丹念に描いていることです。 「フスハー≒NHKのアナウンサーが使う言葉」「イラク方言のアンミーヤ≒東京周辺の人が日頃使う話し言葉」と捉えて頂けるとイメージしやすいかと思います。 (バズーカ―を撃とうとした男にも子どもがいて、自分はあわやその子ども撃つところだった)。, カイルは医者に向かって「(経験しなければいいと思ったことは)ありません。なぜ彼らを殺したのか、神にも説明できます。私が悔やむのは救えなかった仲間のことだけです」と告げました。 >彼らを殺したのか、神にも説明できます。 シオンソルトさんの感想と考察を聞いて追記。 クリスさんの遺体を乗せた霊柩車を見送る為に沿道に集まった人達の中には、イスラム教徒っぽい人も居たように見えました。 先述の通り、演説やニュースで使われるため、例えばアルジャジーラの放送などは耳に気持ち良いです。 その理由は、カイルが戦争で傷つけられているのも関わらず、戦争に魅入られていたからなのではないでしょうか。, 「世の中には、羊、狼、番犬(Sheep Dog)の3種類がいる。 とはいえ、中東の人間にしてみればこの両者には明かな差として目に映ることも想像に難くありません。 診察した医師から「160人も殺した経験を後悔していないか?」と問われると、「全く後悔していない。おれは野蛮人を味方から守っただけだから。そのことは神にも説明できる」「後悔しているのは、味方を救えなかったこと」「また戦地へ行って、もっと救いたい」と答えます。また、原作で彼は、戦地から帰国する時に「仲間を見捨てて逃げているように感じていた」と述べています。彼は自分が生き残っているのに十分に役に立てなかったという罪悪感を抱いているのでした(サバイバーズギルト)。, ある時、街中でたまたま出会った元兵士から「自分を救ってくれた」と感謝されますが、クリスは覚えていません。原作で彼は、「覚えているのは、救った人ではなく、救えなかった人だ」「その顔や場面だ」と言っています。彼にヒーロー願望はないのでした。, 3つ目は、このような抜け殻になってしまう陰性症状です。まさに、戦地での体験によって「心の麻痺」が起こっています。, なぜトラウマになるのでしょうか? それは、クリスのように戦地で死にそうになったり、目の前で人が死ぬなど重度ストレスがあるからです。それでは、そもそもなぜトラウマは「ある」のでしょうか? そのメカニズムを大きく3つに分けて、進化精神医学的に考えてみましょう。, ①危険に備える これは黙祷の意を込めているのでしょうか。最初は無音なので会場がざわざわしていました。しかし、しばらくすると静かになり本当に無音状態になりました。広い映画館ならではの体験です。 >人殺しを好きになるなんてとんでもないことなのかもしれませんが、 アメリカン・スナイパーを観て来た。 イラク戦争でアルカイダ組織と戦う、アメリカ兵士の実話を元にした映画だ。 宗教と思想の浅深高低を計るとしたら、それはただひとつ、「人の命を何よりも尊し」としているか否かという、一点に帰する。 しかし、カイルは犬=「番犬」を殴り殺そうともしていましたし、最後には周りの作戦など気にせずに「一匹狼」のような独断でムスタファを殺してしまいます。 後に子どもがバズーカを拾い上げようとするときには「頼むから、拾わないでくれ」と願います。, この前にも何十人も殺したはずのに、なぜカイルが拾わないでくれと心の底から願ったのか…… ご存じのようにアラビア語はひじょうに広い範囲で使われる言語であるため、方言差が激しいです。通常、非アラビア語圏の人(もちろん日本人も含みます)がアラビア語を学ぶとき、「フスハー」と呼ばれる正則語を学ぶことになります。 確かに公共語の方が覚えやすそうですし、聴き取りやすいのもわかるような気がします。 毒親育ちさんとシオンソルトさんの会話に少し参加させて頂きます。 All rights reserved. これはムスタファ達も同じ事を考えているのでしょうね。神様は納得してくれるか、気になります・・・。 犬が子どもに吠えているのを見ると犬を殴ろうとまでします。, 単純に戦争を批判している映画ではないとは書きましたが、はっきりと戦争批判と言えるシーンも存在します。, 戦友・マークの葬儀で読まれた手紙では、「なぜ英雄たるために戦地に赴かなければならないか」と書かれていました。, 戦場に出向いたカイルの弟は別人のように憔悴しきっており、カイルのことを誇りであると賞賛するものの、「こんなところはクソだ」と批判もします。, これは「英雄」と呼ばれるカイルにとって、その価値観を否定するようなことばであったでしょう。, ムスタファを狙撃する前、カイルはタヤに「もう帰るよ」と電話をします。 羊を育てる気はない。お前らは番犬になれ」, 番犬として育てられたカイルは、戦争の中で番犬たるべき、組織の中で圧倒的な力を持つべきであると考えていたのでしょう。 映画のオリジナル演出なのか、実際のクリスさんも本当にあのマークをペイントしていたなら、どういう意図であのマークを愛用していたのか、気になります。, ふと疑問に思ったのは、創作とはいえ「ボーンレガシィ」のワンシーンと似ていることだ。どういうことかと言うと、「工作員引き抜きのため、兵士を一旦死んだことにし、全くの別人として工作活動させる」という点だ。もしかしてクリスカイルはCIAに引き抜かれる際、殺害されたことにされたのではないか?と思ったわけだ。真実は我々の知るところではないのかも知れない。, […] ントも熱いですよ!)↓ 蝕まれる心 映画『アメリカン・スナイパー』ネタバレなし感想+ネタバレレビュー […], * が付いている欄は必須項目となりますので、必ずご記入をお願いします。メールアドレスは公開されませんのでご安心ください。, このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください。, 今までに書いた映画レビューの中から、この記事を読んでいただいたあなたにおすすめの記事をピックアップしています。, ネタバレ前の感想をまずは読んで下さい。映画を見終わった後、ネタバレを含む解説を読んでいただけると1記事で2度楽しんでいただけるのではないかと思います。, カゲヒナタ映画レビューが少しでもあなたのお役に立てれば幸いです!あなたが良い映画と出会えますように:), 観客に求められているのは、単純な戦争の是非そのものよりも、残酷な運命に翻弄される人間のはかなさや、人間の複雑な感情を読み取ること, <『アメリカン・スナイパー』射殺事件の真相は | アメリカ | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト>, 今週末見るべき映画「アメリカン・スナイパー」 (1/4)|アート|Excite ism(エキサイトイズム), 【Amazon.co.jp限定】アメリカン・スナイパー ブルーレイ スチールブック仕様(1枚組/デジタルコピー付) Blu-ray. >一言感想:それぞれが「考える」戦争映画 戦争による心の傷がなければ、こうはならなかったはずなのに……, 実際のカイルの葬儀の映像が流れた後、エンドロールは「無音」の状態になりました。 同じく戦場帰還によるPTSDを扱った作品に、邦画ですが『毎日かあさん』(2011年、小林聖太郎監督)があります。 それは彼が大切な「日常」を過ごしていたためでもあるのでしょう。, カイルは派遣から帰り、無事に息子も生まれて平穏な日常を過ごしているようでしたが…… 医者にはたいそうに「神にも説明できます」と言ったカイルですが、彼が戦場に赴いたのは「国のため」「仲間のため」だけではないようにも思えるのです。 >(マイケル・ムーアは幼少時からスナイパーが卑怯な人種であると教えこまれていたそうです) 事実、カイルは射撃を教えている車いすの男に「もう一度聞く、なぜあなたは家族のもとに帰らずにここにいるんだ?」と問われても答えられていませんでした。, さらに、カイルは何も映っていないはずのテレビを観たときも、銃の音を聞いていたようでした。, これらから察するに、カイルは『ハートロッカー』で描かれたような「戦争中毒」になっていたのだと思います。, 序盤に狙撃訓練では、カイルは「生きているものは得意です」と言いながら見事にヘビを殺していました(少し楽しそうでもありました)。, そもそも結婚もして子どもがいるのに、死ぬかもしれない戦地に赴くこと自体常軌を逸しているともいえます。 圧倒的な群れを作る羊を抑えつける番犬。 アメリカンスナイパーは子供に電動ドリルを押し当てるなど非戦闘員の未成年者にたいする苛烈な暴力シーンがあるため配慮されているのではないかと感じました。 少年や女性を狙撃するシーンもあります … そんな鴨志田にしても、ミャンマーで仏門に入りながらあんなこんなの“破戒僧”ですから、現地でもどう評価されているのかは何とも言えません。 私は「反戦もの」が嫌いです。確かに反戦の気持ちは大切ですし、私は戦争に絶対反対です。しかし映画などの作品において、作り手側が観る側に「反戦」を提示することは間違っていると考えています。反戦という気持ちは提示されて湧いてくるものでしょうか?観る側が皆同じ気持ちになるのは良いことなのでしょうか?それに「あの戦争は間違いだったんだ」と否定することは、その時代に真剣に生きた人達を否定することになります。後出しで以前の時代を否定するなんて、たいへん愚かで卑怯です。 ああ面白かった、だけでもかまわないが、話の筋やスターの華やかさだけで映画を見た気になってしまうのは寂しい。よほど出来の悪い作り手は別にして、映画作家は、先人が残した豊かな遺産やさまざまなたくらみを、作品のなかにしっかり練り込もうとしている。, それを見逃すのは、本当にもったいない。よくできた娯楽映画は、知恵と工夫がぎっしり詰まった鉱脈だ。その鉱脈は、地表に露出している部分だけでなく、深い場所に眠る地底の王国ともつながっている。さあ、その王国を探しにいこうではないか。映画はもっともっと楽しめるはずだ。, * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *, クリント・イーストウッドの心臓や肺は、並外れて機能が高い。苦境や逆境に強く、追い風を受けてもはしゃぐことがない。つまり、ぼんくらなら舞い上がるところで平然としている。ぼんくらなら沈み込むところでも泰然としている。言い方を変えると、のぼせることがない。全能感などといった醜悪な気分にもけっして染まらない。, 器が大きいことはもちろんだが、復元力や治癒力が非常に発達しているのだろう。1958年のTVシリーズ「ローハイド」から彼を見つづけてきた私としては、これほど長い距離を走破しても乱れない心肺機能に賛嘆するほかない。, もしかすると、彼の身体にはよほどよく効く薬が仕込まれているのだろうか。それとも……彼の存在自体が薬の機能を秘めているのだろうか。, 薬といっても、ドラッグではなくメディスンだ。毒薬や劇薬ではなく、即効性のある頓服薬でもない。ある種の漢方薬に近いのかもしれないが、ゆっくりと身体に働きかけ、時間をかけて体質を改善する薬。, 「アメリカン・スナイパー」を見たあとずっと、こんな妄想が頭にこびりついて離れない。, 最初に見たときは「底力」という言葉が反射的に浮かんだ。この感想は、いまも変わらない。が、再見すると、それだけですませるのは不十分だという気がしてきた。「ハート・ロッカー」(08)や「ゼロ・ダーク・サーティ」(12)、あるいは「リダクテッド」(07)といった最近の戦争映画と比較して差異をあげつらうのも、やや退屈な態度ではないか。, 「アメリカン・スナイパー」の主人公クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)は実在の人物だ。テキサスのロデオ・ライダーで、1998年にケニアのアメリカ大使館爆破事件をテレビで見て入隊を志願し、海軍特殊部隊(シールズ)の一員となる。その後、2001年の9.11事件に衝撃を受け、イラク戦争の前線に赴く。最後の派遣が2009年。射撃を教えていた帰還兵に射殺されたのが13年2月のことだから、映画で主に描かれていたのは約10年間のできごとということになる(子供時代のクリスもフラッシュバックの形で描かれる)。, クリスは、03年から09年の間に4度もイラクへ派遣された。延べ滞在日数は1000日を超え、射殺者の数は160人にものぼる。ゲームのスコアなどではないから、殺せば殺すほど跳ね返りも大きい。つまり、クリスは苦しむ。苦しみと痛みで壊れかかり、「仲間の命を守る」という一点だけを支えに、かろうじて正気を保っている。, イーストウッドは、そんな兵士の無意識に接近する。戦争というよりも戦場を描き、そこで瞬時も気を抜けない狙撃手の肉体と無意識を凝視する。シニカルな視線は入らない。願望やメッセージは託さない。超現実的な描写も交えない。つまり、「フルメタル・ジャケット」(87)や「プライベート・ライアン」(98)や「地獄の黙示録」(79)といった作品とは明らかに一線を画している。, むしろイーストウッドは、クリスの、というよりアメリカ社会が背負っているオブセッションやトラウマを前提に考える。, ひとつは、スナイパーという存在に対するオブセッションだ。60年代のアメリカは、ジョン・F・ケネディの暗殺事件(63年)やテキサスタワー乱射事件(66年)を体験した。前者の実行犯と目されたリー・オズワルドは、海兵隊で射撃の訓練を受けている。後者の犯人チャールズ・ホイットマンは脳腫瘍が原因でひどい頭痛に苦しめられていた。, テキサスタワー乱射事件をモデルにした映画は、ピーター・ボグダノビッチが監督した「殺人者はライフルを持っている」(68)だ。主人公の名はボビー・トンプソンと変えられているが、銃弾を300発も買い込み、「これからブタを撃ちにいく」とつぶやく場面は背筋が寒くなる。映画のなかの犯行現場は、石油タンクとドライブイン・シアター。彼は高い場所に上り、ライフルスコープを覗き込んで無差別殺人を繰り返す。, 観客に恐怖を与えたのは、ロングショットで撮られた無差別殺人だった。なにしろ撃たれる側は、いきなり雷の一撃を受けて倒れるようなものだ。さらにもうひとつ、満車状態のドライブイン・シアターでは、逃げようとしても車を動かせない。犯人は、射的の人形を撃ち落とすように、犠牲者の数を増やしていく。恐ろしいだけでなく、根源的な不快感を呼び起こす映像だった。, イーストウッドは、スナイパーに付随するこのおぞましさや不快感を、前もって承知している。彼はクリスを賛美しない。それどころか、彼の自責と苦痛を一貫して描く。仲間の兵士に「レジェンド」と呼びかけられて、恥ずかしげに眼を逸らすクリス。しばらくぶりにアメリカへ帰還して病院で健康診断を受けると、血圧が170にまで跳ね上がっているクリス。黒々とした髭や、どっしりした身体つきも、実は感情のなまなましい揺れを押し隠す装置に思えてならない。, そう、クリスの動揺は震源が深い。冷静沈着で、観察力や注意力にすぐれていることはたしかだが、だからといって心も安定しているとは限らない。同じイーストウッドが10年近く前に撮った「父親たちの星条旗」(06)には《戦争を知らない奴に限ってわかったようなことをいう。ましてや、戦場を知らない者ほどいいかげんなことをいう》という台詞が出てきたが、クリスは寡黙だ。語れば語るほど自身の行為から遠ざかることも事実だろうが、彼の場合は自己嫌悪とか道義的苦痛とかいった範疇に収まらないほど、存在の根っこが揺さぶられている。魂が損なわれているといいかえるべきだろうか。, イーストウッドは、その状態を見つめる。人は人を殺すことをやめないのか、という苦い諦念。それならば、人間のやることなすことのすべてを撮ってしまおうという姿勢。さらには、なにがあっても狂信や感傷に足もとをさらわれず、宿命を直視しながら正気を保ちつづけようという覚悟。この前提があればこそ、「アメリカン・スナイパー」は、残酷な場面を描いても、ひきつったりこわばったりしない。シリア人のスナイパー(「カイザー・ソゼのように神出鬼没だ」という台詞も出てくる)が、ましらのように屋根から屋根へと飛び移る描写。アル・カーイダの幹部ブッチャーが電動ドリルを使って子供の脚に穴をあける描写。, 人によっては、塩の利きすぎた味つけと解釈するかもしれないが、これは敵対する立場にいる人間の姿をはっきりと描き、話をしっかりと伝えるために不可欠な描写だ。クリスは彼らを狙い、彼らに狙われる。狙撃者が見えない恐怖は、クリス自身も実感している。, こうした場面を見て戦意を高揚させたり、必要以上に政治的なメッセージを受け取ったりするのは、まっとうな映画の見方とは思えない。あえて分類するなら、「アメリカン・スナイパー」は愛国映画でも反戦映画でもなく、厭戦映画に属していると思う。, いや、そんなことで顔をこわばらせるくらいなら、イーストウッドがドン・シーゲルやセルジオ・レオーネの衣鉢を継ぐ職人監督だったことを思い出すほうが、よほど健康な態度だと思う。彼は、娯楽映画の基礎にある語りの力を信頼している。映像と言語と音響効果によって、現実に拮抗しうる虚構を築き上げることが可能だと考えている(この映画では、轟音と無音の対照が素晴らしい)。, そのためにはもちろん、大胆な決断と繊細な感性が求められる。とくに戦場を凝視する映画は、デリカシーを欠くと説得力が得られない。イーストウッドは、ここでも常人離れした粘りと復元力を見せる。キャメラのうしろに立ったときの彼は、おそらく平常時以上に感性が研ぎ澄まされ、微妙なニュアンスを触知することができるのだろう。, その特性は、映画のいたるところで感じられる。カリフォルニアの友人が教えてくれたことだが、アメリカの映画館では、クロージング・クレジット後半の無音とシンクロするかのように客席が静まり返り、場内が明るくなるまでだれひとり席を立とうとしなかったそうだ。, ■「殺人者はライフルを持っている!」1968年/アメリカ映画監督:ピーター・ボグダノビッチ, ■「フルメタル・ジャケット」1987年/アメリカ映画監督:スタンリー・キューブリック, 芝山幹郎(しばやま・みきお)。48年金沢市生まれ。東京大学仏文科卒。映画やスポーツに関する評論のほか、翻訳家としても活躍。著書に「映画は待ってくれる」「映画一日一本」「アメリカ野球主義」「大リーグ二階席」「アメリカ映画風雲録」、訳書にキャサリン・ヘプバーン「Me――キャサリン・ヘプバーン自伝」、スティーブン・キング「ニードフル・シングス」「不眠症」などがある。, 見どころ解説・レビュー 実話から着想を得た感動サクセスストーリー! 中条あやみの熱演光る!, 【2週間無料トライアル】メジャーからZ級まで世界中のホラー映画・ドラマが《見放題》, ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間 デビッド・リンチの「ローラ・パーマー愛」、そして「The 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アメリカン・スナイパー – みんなのシネマレビュー, 「ハートロッカー」「ゼロ・ダークサーティ」に続く近年のノンフィクション戦争映画の傑作です!劇場もこの間の「天才スピヴェット」をブッチギる大入りでした! あくまで描いているのは、出来事の良し悪しではなく、人間そのものなのです。, そのイーストウッド監督の作品の作りかたは『アメリカン・スナイパー』でも変わりません。 クリスは、除隊後、息子を猟に連れ出し、娘を牧場に連れ出すなど家族との時間を大切にしています。戦地で脳に刻まれたトラウマの記憶よりも、平和な日常生活の記憶が上書きされていきます。, このように、1つ目はトラウマを色あせさせることです。これは、時間をかけて普通に日常生活を送ることを積み重ねることです。最近では、そもそもトラウマにさせない、PTSDの発症の予防策の研究が進められてます。それは、トラウマ体験から6時間以内にコンピューターゲームのテトリスをやり続けることです。これは、記憶の学習をするレム睡眠中にゲームの体験の学習を多く占めるように仕向けることで、逆にトラウマ体験の学習をある程度阻害することができると説明されています。, 私たちも同じように、つらいことがあった時は、そればかりに思い悩まずに、代わりに別のことをやる、つまり気晴らしが治療的であると言えるでしょう。, ②トラウマを共有する 用心棒のアミールは「ドリル」が好きな男で、子どもと「村長」をも無残に殺しました。 ただ、それを考慮しても尚、主人公が“相手”に対して構えている心理は大きく違います。 まず、『ハート・ロッカー』は爆弾除去(補助的防衛)の、本作『アメリカン・スナイパー』は狙撃兵(補助的攻撃)の話であり、この両者を同等に評価することはナンセンスでしょう。原則として前者が人を殺傷することは無い訳ですから。 米軍通訳はこのフスハーを用いて現地の人と話しています。 クリスは、帰国しても落ち着かず、外出を避けるようになります(回避)。妻との何気ない話も上の空です(集中困難)。そして、子どもたちの成長を聞いても、喜ぶどころか無表情で無感情になっています(感情麻痺)。 血圧計は異常値を示し、

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